佐渡相川
佐渡研究会・佐渡相川文化的景観調査
新潟県佐渡市の相川地区を対象とする「文化的景観」選定のための調査(佐渡市からの委託調査)であり、2011年度から現地調査や相川の都市空間について都市史的観点から研究している。またこの調査・研究は奈良文化財研究所や京都府立大学との共同調査でもある。
佐渡相川地区は佐渡島の北西部に位置し、南と東側に大佐渡山地を背負い、西は日本海に面している。相川町は南の海士町川と北の水金川の間にできた鉱山町で、西側海岸部を下町、東側台地上を上町と通称し、南北にのびる外海府海岸には鹿伏村や下相川村などの集落が立地する。佐渡島は日本最大の金銀山資源を備えており、12世紀ころから砂金の産地として知られていた(西三川砂金山)。16世紀中葉における鶴子銀山の発見につづいて戦国末期に相川金山が発見され、江戸直轄の地として相川の町は発展した。近代以降も鉱山都市として栄え、平成元年まで採掘が行われていた。
「金山の町」として名高い佐渡相川についてはすでに文献史からの調査・研究、および自治体による文化財調査が多く実施され、多くの研究蓄積があるといえる。しかし、とくに初期鉱山町における社会集団(山師や職人)の実態やその空間的な歴史、急速な発展と共に巨大化した都市の成立過程などについての具体的な検証は、史料的な制約や鉱山開発にともなう建造物や町並みの変化が大きいことからも難しい。
本研究会では「都市の資源性」に着目し、都市空間の形成を基底する条件である地形や水系、現前しない地下資源(地質・鉱脈)の存在とそれらを開発・利用する人間がつくりだす空間的な諸相を現地調査をベースとして領域的な観点から研究をすすめている。そのため現地調査では従来の街区調査(屋根伏せ)に加え、石や水の痕跡調査や地形測量といった方法も取り入れている。
相川町の地形構造は、a) 鉱脈が存在し山師が開発した鉱山集落のあった山間部である上相川地域、b) 海村を起源とし都市発展とともに計画的に形成された低地部の下町地域、c) 両者の間をつなぐ尾根を軸に計画的に造成されたと考えられる台地上の上町地域にわけられる。また山から流れ出す五つの沢筋によって地形構造をさらに分節するかたちで町が存立している。
佐渡研究会では文化的景観調査の視点と並行するかたちで、他の研究プロジェクト(オランダ・イタリア・フランス)の方法論や視角を共有しながら独自の論点での研究報告を月一回程度で行っている。すでに現地調査は2011年、2012年と計三地区の街区実測調査を行い、下町・上町地区の広域的な都市調査、鉱山集落跡地である上相川および相川に先行する鉱山集落であった鶴子銀山の視察などを実施した。
主な活動
- 2011年6月15日 佐渡研究会発足、以後、月一回程度の研究報告会を実施
- 2011年9月24日–9月28日 第1回現地調査(下町地区における街区・都市調査 および 上相川鉱山集落跡視察)
- 2012年7月14日–7月17日 第2回現地調査(上町、下町地区における街区・都市調査 および 鶴子銀山・鉱山集落跡視察)
- 2013年 報告書の執筆
- 2015年3月 『佐渡相川の鉱山都市景観-保存調査報告書-』刊行
参加メンバー
所属は参加時点、特記なき場合は東京大学・伊藤研究室。
- 伊藤毅
- 初田香成
- 松田法子
- 赤松加寿江
- ケン・タダシ・オオシマ(東京大学・ワシントン大学)
- 髙橋元貴
- 福村任生
- 奥原徹
- 光永理人
- 八賀俊一郎
- 中尾俊介
- 松本純一
2013年01月12日
last modified: 2015年10月22日