本郷
本郷プロジェクトは、都市建築史的フィールドワークの方法を開拓すべく、2005年度から2007年度にかけて行われたプロジェクトである。「本郷」を名乗りつつも(当初は文京区本郷一帯が想定されていたため)、実際には文京区白山1丁目1~14番地(旧小石川区指ヶ谷町の一部、八千代町、本郷区丸山福山町)を対象地とする。
対象地は崖下の旧幕臣屋敷地であるが、旧地番が二区に分かれていることに示されるように、小規模戸建て住宅、戦前期アパート居住、製本工場を中心とした家内工業的工場、花街、併用住宅型地元商店街など多彩な性格を併せ持つ地域である。近代以降の宅地形成の諸類型が存在する一方で、都心部と郊外の間に存在し、下町とも山の手とも言い難い、大規模な都市計画や被災といった経験もない、既存研究では見過ごされてきたありふれた町であった。
プロジェクトでは、こうした地域の形成の履歴を丁寧に発掘することで、都市の豊穣かつ個性的な特質と、その背後に横たわる意味を読み取ろうとした。そして、地域が大きなシステムや技術によらず、緩やかに持続再生を繰り返してきた事実を意味づけることで、歴史的アプローチから都市の持続再生学の創出に貢献しようとした。成果は報告書『地域の空間と持続―東京白山・丸山福山町地区を素材として―』としてまとめられている。
プロジェクトは東京大学社会基盤工学専攻・清水英範研究室との合同研究会を通じて進められ、とくにGISを通じた店舗分布の復元や地形測量といった作業において同研究室の多大な協力を得た。また実測調査にあたっては東京理科大学工学部建築学科・伊藤裕久研究室と東京大学生産技術研究所の大田省一氏(当時)の協力を得ている。
主な活動
- 2005年度 予備調査
- 2006年度 建築実測、街区調査、ヒアリングなど本調査
- 2007年度 補足調査、報告書作成
成果
- 21世紀COEプログラム「都市空間の持続再生学の創出」報告書『地域の空間と持続―東京白山・丸山福山町地区を素材として―』(伊藤毅監修、2008年)
メンバー
所属は参加時点、特記なき場合は東京大学・伊藤研究室。
- 伊藤毅
- 田中傑(芝浦工業大学)
- 松山恵
- 初田香成
- 松田法子
- 江下以知子
- 李キールン
- 三倉葉子
- 笠井洋史
- 鈴晃樹
- 鈴木温子
- 朝倉悟郎
- 北島祐二
- 寺田由佳
※空撮写真は国土交通省による国土画像情報(カラー空中写真、昭和59年撮影)を伊藤研究室で加工したもの。
2013年01月12日
last modified: 2013年01月15日